もう一度

1 北山

 先日京都に行ったことを書いたが、実は二日連続でまた行ってしまった。自分は昔ッからそういうところがあって、かつ丼にハマったら毎日のようにかつ丼を食べにいくようなところがある。

 京都と言っても、前回は四条周辺だったが、今回は北山というだいぶ離れたところだ。初めて訪れて感じたのは、緑が多く、高級住宅地といった感じだった。どうやら京都ノートルダム女子大学のキャンパスがあるらしい。ハイソ、ということばが似合う感じがする。しかしこういう、カタカナの固有名詞と緑が多ければハイソというのも、ちょっと昭和的な考え方なのかもしれんなという気もする。事実、日本の街のほとんどは未だ昭和に根付いているのだろうとは思うけれども。

 北山の感想だけれども、あまりにも整然としており、ザ・京都という感じなので、もし親戚のオバちゃんとかがここらへんに住んでいたら、それだけで気圧されてしまいそうだなという気持ちにもなった。あこがれの対象になりやすい街だろうなとも思う。

 観光地として訪ねる人はあんまりいないと思うが、周囲で京都にかつて住んでいた人たちは、北山のことを褒める人が多かった。

 なんでわざわざここに来たのかというと、コーヒーハウスナカザワという店を探していたから。カレーライスがおいしいらしくて、なおかつとてもボリューミーと聞いていた。

 ナカザワは駅からすぐ近くだった。開店前に到着してしまい、散歩をして数十分ほっつき歩くことにした。住宅地を歩いていると、奥のほうに山が見える。というよりも四方に囲まれているのかな。農園みたいなところもあって、なんだか牧歌的で落ち着いているやと思った。あとから聞いた話では、奥のほうには深泥池という心霊スポットがあるそうな。調べてみると本当に怖そうで、一人で好奇心で行くのはやめておいたほうがいいように思えた。

 ただ美しい光景はたぶんありそうだ。湖畔をこの目で見てみたいという気持ちはある。しかしおっかない。ところで、かりにそこまで行ったとして、それを写真におさめる気持ちにもなれないだろう。写真に撮れない(撮る気にならない)美しい光景というのは、SNS時代にとってなんだか風刺的な存在のように思える。

 深泥池はさておき、散歩をひとしきり終えてから道を戻って、ナカザワ近隣の書店でクロッキー帖とボールペンを買った。ちょうどそれくらいで開店の時間になった。

 

 ナカザワのカレーライスはとてもおいしかった。詳しくは自分で調べていただきたいが、普通サイズでもびっくりするくらいの量だった。空腹だったので自分にはちょうどよく、あっという間にたいらげてしまった。家庭的なカレーが好きなひとは是非たずねてみるといいと思う。

 カレーライスめあてで来たと言っても、ナカザワはコーヒーハウスだから、つまるところ喫茶店だろう。そこで食後になにか注文しようと思っていて、メニューを確認したらキューピッドというものが目についたので物珍しさで注文して、フロートも追加で乗せてもらった。

 店の人に聞いてみると、キューピッドはカルピスのコーラ割りだった。なるほど実際飲んでみるとそんな味がする。独特の風味があってクセになりそうだ。ジンジャーエールのような感じで、好きなひとは好きになると思う。

 キューピッドを飲みながら、クロッキー帖に落書きをいくつか描いた。最近、人と会うたびに紙とペンを差し出されるがまったく描けないので恥ずかしく、申し訳なくもあるので、そろそろ練習しようかと思う。

 そんなこんなで一時間以上は店の中に居たと思う。とても居心地がよかった。その日は天候がよく気温が高かったこともあって、まるで小春日和だった。そんなときに好きになれそうな喫茶店と出会えたことを幸運に思う。そしてナカザワの場合、カレー目当てでも好きになれそうだ。

 北山という街はまだまだ奥が深そうである。また行こうと思う。