フレーズ

 二時間だけの睡眠はそれでも続く。

 漫画をたくさん描くようになった。小説や作劇の代替行為として。せっかくなのだしと思って身に沁みついたメソッドを意識的に取り除くようにする。

 ここ最近、ちょくちょく心の中で「鋼鉄」と唱えるようにしている。なんだか熱血キャラクターみたいだが、心を固く持ちたいという意味でそうしている。「鋼鉄」と唱えれば、多少は気が引き締まって緊張感が出る。足が震えるようなことがあっても、鋼鉄すれば棒立ちはできる。

 特定の言葉で元気を出す、そういう言霊を信じる考え方はシンプルでいい。ちょっとシンプルすぎて笑いそうにもなるが、生活にはそういうちょっと気の抜けるようなことがあったほうがいい。わたしは鼻で笑われるくらいでちょうどいいと思っている。対外的な発想にならなくてすむ。イメージのコントロールに用いるべきではない。ことばは第一にいたわりのためにあってほしいとわたしは思う。

 思案と行動だけでは解決しないことがある。そのときに人の背中をさするのはフレーズの魔法だとわたしは思う。わたしには、わたしに対して最適化したことばをわたしのために用いる権利がある。それが尊厳だとわたしは信じる。

 自分はなりきれていないが、まあちょっとはそういう側面を持ってもいいかなと思って「鋼鉄」を採用した。これはとっても恥ずかしいお話。それでも構わなくなったのです。