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加齢は二枚舌

 去年の今頃は京都に通い詰めていた。出先で本を読んだ。甘いものを食べた。珈琲を飲んだ。誰かと会う約束をするわけでもなかった。もうそのころには一人で歩いて一人で帰ることに慣れていた。そういうシーズンだった。

 三箇日から日程をずらして帰省することにしたので、明日からわたしは大阪に少しの間だけいる。また京都に行こうかとも思う。読書会の友人と次の課題図書の話をした。「ストーナー」か「1984」になりそうだった。ストーナーは大阪の本棚に、1984は電子書籍のアカウントに紐づけられている。どちらとも愛着のある物語だった。

 わたしは読書家ではない。ただしある時期、濫読するひとだった時期はある。そういう、一過性のものとしての郷愁がある。歳をとることは郷愁を増やすことかもと思った。それさえも失いつつあることを半ば自覚しながら。

 歳を取って、それなりに狡猾になり、それなりに痴呆していく。物を憶えると同時に忘れていく。加齢は二枚舌で、わたしの舌はより二又になっていくことでしょう。