オリーブ

友人からキャッチボールをしませんかと誘われて、二人でくさむらの上で球を投げ合った。

友人は野球経験者なので難しい球も軽々と捕るが、わたしは球を受けそこなったり目測を誤って何回も走らなければならなかった。当然のことながらすぐにヘバる。不眠症の人間が元気よく駆けまわると何が起こるかというと突然の急停止で、わたしはまったく動けなくなってレジャーシートのうえにバックパックと一緒にジッとする。そのあいだに友人はランニングをして時間を潰してくると言う。冗談かと思ったらそのまま走っていって見えなくなった。これだけ体力の差を見せつけられると却って清々しい気持ちになって、わたしは顔の上にタオルをかけて風が来るのを待つ。今日は炎天下だったが、どんな天候であっても季節はその姿をすこしだけ見せるものだ。動かないでいると涼しい風を感じることができた。タオル越しに観る世界はタオルの色だった。オリーブ。そのタオルはいつぞや別の機会でキャッチボールしたときに買った。連続性について考え事をする。息がととのってくる。ざっざっと音が鳴る。タオルを顔から払いのける。太陽とくさむらと友人が帰ってくる。わたしはまた立ち上がる。